「本仮屋ユイカ」と「ジレッタ」というキーワードが並ぶとき、それはただの舞台出演ではありません。2017年にBunkamuraシアターコクーンで上演された“妄想歌謡劇『上を下へのジレッタ』”で、本仮屋ユイカは原作手塚治虫が描いた狂気と幻想の世界に己の声音と存在感を投影しました。本稿では、その舞台の魅力、彼女の演技・歌声との融合が生む唯一無二の舞台体験を詳しく紐解きます。
見どころは“妄想歌謡劇”というジャンルの新しさ
この舞台は漫画『上を下へのジレッタ』(1968年・手塚治虫)を原作に、脚本・演出を倉持裕氏が手掛け、「妄想歌謡劇」として大胆に再構築 。妄想と現実、虚構と歌謡劇がせめぎ合う舞台上で、驚くほど軽やかに音楽と芝居が交錯します。
本仮屋ユイカが演じる“間リエ”の存在感
主人公・門前市郎(横山裕)の元恋人であり、彼を支え続ける哀しきヒロイン「間リエ」を演じる本仮屋ユイカ。契約結婚ののち破局しながらも心を傾ける、強くも脆い女性をその知性と柔らかさで体現しました。ユイカ自身も「演じながら歌うという未知の挑戦に戸惑いながら、自分の“芯”を探している」と語っています 。
音楽×歌劇による没入体験
音楽は宮川彬良氏によるジャズ風アレンジが中心で、エンタメ性と風刺の融合が映える演出に 。舞台上では本仮屋さん自身が歌い、音楽劇としての“歌唱力を持つ女優”という姿を初めて披露する場となりました。ユイカの歌声は舞台世界へと観客を引き込み、“妄想”が現実へと浮上する瞬間を強烈に印象づけました。
“妄想”と“現実”を行き交う構造
演出の倉持裕は「虚構と現実が戦う、妄想が現実を呑み込む構造が重要」と語り、60年代のテレビ社会と現代のスマホ時代の類似性にも触れています 。本仮屋の間リエはその境界に引き寄せられる存在として、物語の道標的役割を担いました。
共演陣との化学反応
横山裕(門前)、中川翔子(小百合チエ)、浜野謙太(山辺音彦)らと共演し、稽古から舞台上まで一体感あふれる交流が見られました。特に横山との夫婦シーンや、浜野とのコミカルな掛け合いに、リエの感情変化や本質が際立っていました。
本仮屋ユイカの成長と舞台の意義
ユイカは「演劇として、歌として、すべてが繋がる舞台ならではの経験だった」と振り返り、歌劇女優への新境地を開拓しました 。彼女がシアターコクーンという格式ある劇場で主役級の存在感を放ったことは、女優としてのキャリアにおける大きな転機となったと言えるでしょう。
まとめ:唯一無二の“歌う女優”としての挑戦
- 手塚治虫の原作を大胆に再構成した「妄想歌謡劇」というジャンルが魅力
- 本仮屋ユイカは歌と演技を体現し「間リエ」というキャラクターに自らを重ねた
- 虚構と現実がせめぎ合う世界観の中で、彼女の存在感は観客の没入を誘う鍵となった
- 豪華共演陣との化学も含め、舞台全体が一つの高密度エンターテインメントとして昇華
“ジレッタ”の世界に、歌と演劇で本仮屋ユイカが大胆に挑んだこの舞台は、今振り返ってもその力強さと新機軸に満ちています。